福岡市の歓楽街・中洲の屋台「省ちゃん」店主、原省次(71)は、じっと寒風に耐えていた。肺がんを患い、肺の一部を摘出している。「コロナになったら死ぬ覚悟しとる」。客から離れたところにポツンと座る。
体調は思わしくないが、店先にいないといけない。市の屋台基本条例は、道路・公園の占用許可を受けた人が「自ら営業を行わなければならない」と定めているからだ。条例は他人に貸すことを禁じており、博多区職員らが巡回して確認している。「俺がおるかどうか、屋台をのぞきこむ」と苦笑する。
創業41年の「省ちゃん」は原則、省次「一代限り」のはずだが、経営者の配偶者や直系血族のうち、条例施行日と承継申請時に主たる生計を屋台で得ている屋台営業従事者ならば承継できる特例がある。市側は「激変緩和措置として例外的に認めたもの」と位置づける。
病身の省次は敬太(41)に継がせようと養子にした。手続きをしようとすると区役所で突き返された。市側は「条例施行時に提出させた『営業者名簿』に敬太の名前がなく、その時点の屋台従事者と認められない」というのだった。いま敬太は「納得いかない」と市を相手に裁判を起こしている。
繁華街・天神の屋台「ナカナカナカ」の高野将樹(38)も、義父の中洲の屋台を継げなかった。名簿に名前がなかったからだという。「それで断念し、公募に応じて自分の屋台を開きました」
「たぶん名簿に書かなかった…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル